昨日の続き
老婆は立てない
クララのような奇跡は起きなかった
ただ単に転んだだけではなさそうだ
そもそもに立つ能力がない
となると・・・
「ど、どうします・・・?」
取り合えず、立たせようと頑張っていたのを一旦やめ
老婆を地面にそっと置く俺たち
作戦の変更を余儀なくされた
「そういえばこのおばあさん、どっから来はったんです?この辺の人・・・?」
一緒に老婆を立たせようと踏ん張っていた若い母親に聞く
「この人はここからすぐのところに住んでいます!家も知っています!」
このフラフラの足で歩いていたくらだ
多分、この近所に住んでいるんだろうとは思ったが、やはりそのようだ
つうかこの人、通りすがりの割りには老婆に詳しいな・・・
俺が来る前にそこら辺は聞いていたのだろうか
若干不審に思いつつも
「私、この人の家に行って、家族を呼んでくるのでこの人と、この子を見ておいて下さい!」
俺に老婆と生後間もない子を託し、老婆の家に行ってしまった
「やあ、こんにちは・・・君も大変だね・・・はは・・・いい子でいてくれよ?頼むぜ・・・」
ベビーカーの中の日本の未来に声をかける
嗚呼
今、俺の両手にはこの国の希望と絶望が同時に収まっているのか・・・
右手には赤ん坊の乗ったベビーカー
左手には老婆(地面にしゃがんでいる肩に手を添えているだけだが)
しかし・・・
泣いたりしないだろうか、と思っていたが
お母さんがどこかへ行ってしまった、というのにてんで気にしていない
「この程度、大したことではない」
そんなことでも思っていそうな顔だ
そうしていること約数分
老婆の家族が迎えに来た
老婆はじいさんに抱きかかえられ、お礼を言いながら帰っていった
これで一件落着だな・・・
若い母親からもお礼を言われ
折角なので俺はこの機に便乗し、名詞を渡した
「車を買うときがあれば是非・・・」
まあ尤も、絶賛転職活動中だがな!!
しかし
「はい!車を買うときがあれば絶対そうさせて頂きます!!」
俺の事情など全く知らず、そんなことを言われてしまった
そうして、俺のサボり計画は老婆により、見事に失敗したのであった
つづく
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