公開結社豪泣部

定期を持つ手が震える

今までずっと秘密にしていたことを、話そうとしているのだ

俺のただならぬ状態を察したのか、Fランデブが真剣な顔をする

「こ、これは・・・京都の家から伊丹までの定期券・・・今まで秘密にしていましたが、じ、実は・・・この一年半ほど、毎日京都の家に帰っている・・・んです・・・。」

「まじか・・・！？」

息をのむFランデブ

俺は続ける

さあ、言うぞ・・・

革新的な部分を・・・！！

「な、何故なら・・・朝が怖い、朝が怖いからなんです・・・。一人で朝を迎えることができない・・・だから毎日京都の家に帰っているんです・・・」

「と、とりあえず二階へ行こうか？あそこなら誰も来ないし、話も聞かれない」

Fランデブはそう言い、俺とともに二階へと上がった

二階・・・

かつての法人営業部のオフィスであったが、今はもう移転しており、物置と化している

そこで・・・

俺は自分のことについて話した

Fランデブは笑ったり、否定したりもしなかった

そうして、俺の精神的な状態を鑑み、車の買い替えは無くなり、

また、俺の仕事量も減らされることになった

だが、こんなものは対処療法に過ぎない

最後にもうひとあがきしてやる

俺の賞味期限が切れる前までにな・・・！！

つづく

一般に・・・

未経験の職に就くのは所謂第二新卒まで、というのが普通らしい

卒業して三年以内のもの・・・

国も確かこの第二新卒を採用した企業には助成金を出すなど、支援もしている

裏を返せば

俺の賞味期限は今、ギリギリ

最後のチャンスと言っても過言ではない

そんなときに！？

車なんて買い替えている場合か？

嫌だ・・・

俺は・・・

こんなの認めない

こんなところで・・・

終わって！

たまるか！！！！

こうなれば最終兵器だ

今までFランデブをはじめ会社の連中には黙っていたが

やるしかない

そうして俺は・・・

「これを見てください」

Fランデブと二人きりになったのを見計らい

あるものを取り出した

そう

これは・・・

定期券

桂から伊丹までの、である

もちろん、普通に考えれば要らない

俺には借り上げのアパートがあるのだから

だが

俺は一人で朝を迎えることができない

怖いからだ

だから、京都の家に帰っている

しかし、それは会社には今までずっと秘密にしてきた

俺が精神的に問題を起こしている、と知られたくなかったからだ

だがもう

四の五の言っていられない

俺の最高機密を今ここで



Fランデブに話そうではないか・・・！！

つづく

俺は二年に一度車を買い替えなければいけない

まあ社割や会社からの手当ても出るため、ものすごい負担というわけでもないが・・・

そういうわけでもあり

今から約二年前・・・

俺はあのダサい自社製品を買う際、自分自身に誓ったのだ

（これが最初で最後の車だ）

と・・・

つまりこの車を買い替えさせられるまでに転職する

それを目標にしていたわけだが・・・

公務員試験に失敗し

民間も内定は得たりしたものの、結局辞退したり等々

俺の転職はうまく決まらないまま・・・

この日を迎えてしまった

絶望が俺の胸を覆う

何よりもそう

俺の市場価値の無さの、である



俺は一体、どれだけ需要の無い存在なんだ・・・

厳然たる事実

言い逃れる余地もない

俺はしがない自動車販売員に過ぎない

そしてそこから方向転換することさえ、許されないようだ

嫌だ・・・

嫌だ・・・

嫌だ・・・

こんなのは・・・嫌だ・・・

このまま一生こんな状況が続くだなんて・・・

というわけで

つづく

結論から言うと

おはによって俺が導かれる、なんてことはなかった

おは後初めての転職活動

散々結果をもったい付けやがった結果、

俺は落とされた

より条件に合致する候補者がいたため

また、線が細い印象があった、とも


https://picrew.me/image_maker/61868

何だよ

線が細い印象があったって？

印象論じゃねえかそんなの

大丈夫か？

自分がいかに的外れなことを言っているのか

本当に理解しているのだろうか？

そもそも、サステナビリティ活動を推進します！とか言っている企業が

人を見た眼で判断していいのか？

体系いじりはポリコレ的にも禁忌

言っていることとやっていることが、正反対を向いている

これぞ茶番・・・！！

面接、というものが如何におかしな採用方法なのかを如実に示している

実に下らん

しかし・・・

どうしたものか

後がなくなった

いやまじで

どうしよう・・・？

つづく

俺の人生を区切るとすれば

それはbeforeおはか

afterおはによって区切られるであろう

それほどまでに俺にとってはイノベーティブな出来事であったからだ

そうして向かえた・・・

afterおはの面接

ダメ元で応募した企業から、何と面接のご案内が来たのだ

かの有名な渋沢栄一氏が設立した、由緒ありまくる某企業・・・

まあ渋沢氏は５００もの会社・団体を設立したと言われているため、意外とたくさんあるのだが・・・

さてさて

かくして俺は

椅子に座っていた

俺の向いには、三人の面接官

人事が一人

そして、経営企画部の人が二人

そう、経営企画部の面接だからな

なんだかとても偉そうな名前だ

テンション上がるぜ・・・！！

つうことで

会社のことよりも、俺の学生時代の話をやたらと聞かれる

俺の浪人時代のことなんか、今更どうだっていいだろ・・・

そうして話は進み

俺の転職理由へと言及された

「営業からの異動がほぼ絶望的、だとのお話でしたが、HPにはジョブローテーションについて書かれていましたよ？」

おおう

まじかよ！？

嘘八百もいいところだ

いやまあ、稀に営業から異動するやつもいるらしいから、嘘ではないにしろ・・・

そんないい会社だったら誰も苦労しねえよ！！！！！！！

それに、転職業界でも俺の会社のそうした事情は有名な話らしい、とエージェントから聞いたことがある

疑いようもない事実だと思っていたが、そういうわけでもないらしい

しっかし、俺の会社のHPを事前にチェックされているケースは初めてだな

この面接官、暇なのか・・・！？

この質問に対しては俺も首をかしげる他はない

「い、いやあ・・・？そんなことはないと思うんですけどね・・・？少なくとも、私の知る範囲で営業から異動された方はいませんが・・・？？」

つうことで予想の斜め上の質問などに狼狽えながらも、面接は終わった

さて・・・

俺はおはによって導かれるのか・・・！？

つづいてくれ！！！