皮肉なことに
女との別れにより、過去最高クラスに精神を破壊させられていた俺だが
最終面接を受ける運びとなった
京都に本社を構える企業で、人工知能を使ったソリューションを展開している
そいつの販売戦略兼広報・・・というのが今回募集されていたポジションで
2月末に受けたオンライン面接に合格した俺は
この日、京都本社にて
わざわざ面接のために東京からやってきた、という役員と相見えることとなったのである
嗚呼
本当に嗤えるぜ
運命というものは
なぜ、よりによって
俺が過去最高に沈んでいるときにこんなイベントを用意するんだ
本当に嗤える
自嘲を浮かべる俺の顔を役員は愛想だと受け取ったらしい
柔和な笑みを浮かべた
マスクをしていたおかげでうまくごまかせたようだ
しかし・・・一体、毎日どれだけの整髪料を必要とするのだろう・・・
とそのオールバックの髪を眺めていると、役員が口を開いた
「さて、これから面接を始めようと思うのですが・・・君のことを深く知りたいと思っているからね?プライベートなことを聞くかもしれないが、言いたくないことや答えにくいことがあったら、遠慮なく言ってくださいね?」
俺は分かりましたと答えたが
気分が落ち込んでいるせいか、声がうまく出せない
ちゃんと聞こえただろうか
「では・・・言ってるそばから恐縮なのですが・・・」
「好きな女性のタイプは?」
(・・・え)
一発目から、仕事とおおよそ全く関係ないであろう謎の質問が来た
真意が分からない
いや、真意なんてきっとない
言葉のままの意味だ!!
お前は呪術回戦の東堂葵か!?
こいつが東堂なら、
「ケツとタッパのでかい女が好きです!!!」
で即内定なのだろうが
恐らく、今は違う
だがしかし、これもまた皮肉
女に振られた俺は、そこからどんな女が理想なのか、ということを数日前から考えるようになっており・・・
そこで出した結論は
「裏切らない人・・・いや、一途な人というべきですね。少し、言葉選びを間違えてしまいました。」
まあ、実際には「妹よりも年下で巨乳で健康で裏切らない女」なのだが、いくらか割愛させて頂いた
「おお・・・そうですか。一途な人ねえ・・・。ということは、過去にお付き合いされた方と何かあったのですか?差し支えなければ、お聞きしたいですね。」
ああ、いいですとも
つい数日前に俺の身に起こった悲劇について
話そうじゃないか・・・
ははは・・・
しかし、本当に皮肉だな
女と別れ、意志消沈する俺に向けられる質問が、これだとは
皮肉の神様から、俺はどうしようもなく愛されているらしい
と、いうわけで俺は、ここ数日のことの顛末について、役員に話したのであった
これ、受かるのか??
つづく