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『おぽぽおじさんのブラジル滞在記』 第ニ章
夕暮れの中黄昏れていたら鼻に虫が飛び込んで来ました。
今日は第二章します。
第二章
眩しい陽射しを浴びて私は目を覚ました。
激しい頭痛がする。
所謂二日酔いだ。
既に太陽は南中し、子供達が辺りを駆け回る。
クセの強い髪を無造作にかき上げ、私は辺りを見回した。
一先ずこの酷い喉の渇きを何とかせねば、という思いに駆られて水を求めて辺りをさまよい始めた。
噴水が目に入ったので勢いよく飲み干した。
崩れ落ちるコンクリート、飛び散る水、子供達の悲鳴。
全て遠い世界の様だ。
よく考えると水を飲むのは一週間ぶりだ。
一心地着くとZippoを取り出して火を飛ばし、煙草の先に燈す。
寝起きの一服は格別だ。
心なしか私の周りに鳩が集まってきているのには敢えて触れずにおこう。
取り敢えず奴にブラジルに着いた事を報告せねばならない。
私はくわえ煙草のまま公衆電話を探した。
電話は公園の中央で容易に見つけることが出来た。
小銭を放り込み国際電話を掛ける。
暫くの電子音の後、受話器を取り上げる音がした。
私「もしもし、ワシや。」
奴「その濡れた少女の花弁に激しく振動するコケシを・・・。」
電話口からは奴の淫猥な語りと共に、機械の激しい振動音と少女の悶える声が洩れ聞こえて来た。
私「・・・。」
奴「おうおっさん、着いたか?」
私「あぁ、もうすぐあいつとも会う事になっている。」
奴「そうか、引き続き頼んだ。」
私はそのまま受話器を置いた。
会話の終わり間際に何故か機械の振動音が水っぽくなっていた。
私はまた煙草に火を点け、歩き出した。
街は祭の真っ最中らしく、人々の歓声や怒号、サンバが響き渡っていた。
思わず踊り出しそうになるのを必死で堪えながら溢れ返る黒山の中を割って進んだ。
小一時間程歩き、私は一軒の家に差し掛かった。
中に入ると一人の老人が佇んでいた。
私「久し振りやな、ロナウド。」
ロナウド「おぉ、お前さんとは去年の山科観光以来じゃ。」
ロナウドは移民時代以来の友人だ。
去年は我が故郷山科に招いた。
ひとしきり昔話に花を咲かせた後、話は本題へと次第に移って行った。
ロナウド「至極のコーヒーが飲みたいらしいな。」
私「あぁ、どうすればええんや?」
ロナウド「さあな、世界中に散ってしまった。
あいつらに狙われていたからな。」
私「あいつらとは?」
ロナウド「至極のコーヒーの持つ長寿の力に魅せられた者達だ。
お前も至極のコーヒーを求める者ならばいずれはぶつかるだろう。
探せぃ!!
この世の全てをそこに置いて来た。」
私「・・・。」
ロナウド「まぁ今夜はゆっくりして行け。」
そう言って移民時代から被っている私の土産の日本の編笠を被った。
私「何処行くねん?」
ロナウド「買い出しさ。」
ロナウドはサンバが響く夜の街に紛れて行った。
続く
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