閃輝暗点
今日も会社へ行く
嗚呼
しかしつまらないな
生きる目的がないというのは・・・
そんなことを考えながら、デスクに座り
メールをチェックする
が
(あれ?)
メールの文字が読めない
視界に模様のようなものが浮かんでおり、そいつのせいで文字が読めないのだ
焼けたマフラーのような色をした
ギザギザした模様・・・
そいつが邪魔で、メールが読めない
こんなことは初めてである
(なんだこれ・・・)
片眼を閉じたりしても、模様は全く同じように見える
ということは、問題が起こっているのは目本体ではなく、もっと奥の方か?
脳とか・・・!
そう考えた俺は見えづらい視界の隙間を縫うようにして、グーグルにアクセスし
検索した
視界 模様
こんなんでヒットするのか・・・?
すると
閃輝暗点、というのがヒットした
必殺技みてえな名前だな
イメージ図を見てみると・・・
俺が今見ているのと同じ感じではないか
恐る恐る、説明文を読んでみる
すると・・・
「激しい片頭痛の前兆としてこうした模様が見えることがあります」
この模様が徐々に消えていき
その後、割れるような頭痛に襲われるらしい
(まじかよ・・・)
ジェットコースターで徐々に上へ上がっていくときのような
そんな恐怖感に包まれる
「頭痛薬を事前に飲んでおくと痛みが緩和されることもあるようです」
(まじか!)
さっきから驚くことばかりで、まじかしか言葉が出てこない
とりあえず、慌てて頭痛薬を飲む
本当に痛みなど来るのだろうか
ちなみに詳しい原因は不明だが、セロトニンが不足することで脳内の血管が収縮したり膨張したりすることで、視神経に作用して模様が見えるし、頭痛が起きる?と考えられているらしい
セロトニンというのは幸せホルモンだ
こいつがうまく作用しないとうつになったりする(という説がある)
セロトニンならここ数日、最高に最低になっているからな・・・
やはり俺の人生は終わっている
そんなことを考えている内に、視界は徐々にクリアーになっていく
これならメールも読めそうだ
しかし
それもつかの間
それと比例するかのように、頭の右側に鈍痛が生じ始めた
誰かに脳を直接ガシッっと掴まれているような
そんな感覚
痛い
いや
すごく痛い
どころか
痛みはどんどん増していく
今はすごくすごく痛い、くらいだろうか
痛み止めを予め飲んでこれなら
何もなかったなら、どれだけ痛かったんだ・・・!?
痛みで激しく圧迫される思考の中でそんなことを思う
今度は痛みのせいで、パソコンの画面がうまく見えない
砂あらしがかかったかのようになる
こういうときはアレだ
居合の道場で習った呼吸法
逆腹式呼吸・・・
師範によれば、これを使えば、激しい滝に打たれても何も感じなくなるらしい
逆腹式呼吸を使い、回復に努める俺
だが・・・
全くもって効かない
今度は吐き気までしてきた
口の中がサラサラの唾液で満たされる
吐く前の予兆だ・・・!
席を立ち、トイレへと向かう
どういうわけか、腰まで痛い
(腰が痛すぎて、真っ直ぐ歩けない・・・)
ナンバ歩きのように、体を左右にねじるようにしながらトイレへと向かう
個室に入り
便座をとりあえず消毒する
吐くときに手を付くかも知れないからな
しかし
ここまで俺が用意しているのに、吐き気ばかりでリバースしない
一周回って気持ち悪い
おまけに便座の前で屈むのは、腰にも来る
これはもう無理だ
痛み止めも呼吸法も効かない
状況は悪くなるばかり
刀折れ、矢尽きるだ
早退することにした
課長と本部長に連絡し、家に帰る
駅直結のビルだから、こういうときすごく楽だ
烏丸駅のホームに降り
丁度やってきた電車に乗る
電車はユニフォームを着た中高生らしき連中で満たされていた
椅子には座れた
非常にガヤガヤしている
(頼むから大人しくしてくれ・・・)
今の俺には負担である
そんな願いもむなしく・・・
中高生たちの有り余るエネルギーは電車の中で炸裂しまくっていた
電車の席に浅く腰掛け
桂駅への到着を待つ
烏丸~桂間は8分くらいだが
永劫にも思われた
ようやく家に帰ると幸い、おかんがいた
おかんは薬剤師である
こういうとき、最強のソリューションを持っている
子供のころから世話になっている開業医は、午後の診療はやっていないため
もう一軒、内科の開業医はあったが
「あそこはヤブだからだめ!!」
というわけで、新しくできた開業医へと行くことになった
おかんはここらの病院とその評判は大概網羅しているのだ
新しい開業医は午前診のギリギリだったためか、素晴らしく空いていた
とりあえず、具合が悪い人は外で問診票を書いてもらう、というので俺は外に設置された椅子に座り、問診票を書く
模様が見えたこと、頭と腰が痛いこと、吐き気がすること
体温は幸い36.3度だった
問診票を書きながら、事前に渡されていたゲロ袋をきちんと使用する
吐く、なんていつぶりだろうか
朝飯もあまり食べていなかった俺の吐しゃ物は、薄茶色のサラサラした液体のようであった
その後、中へと案内される
血圧を測られたり、聴診器で胸の音を聞かれたり
先生の質問に答えたり・・・
しかし、原因とかは結局よく分からなかった
痛み止めと吐き気止めを処方され
俺は帰った
病院ではPCR検査をしていなかったため、市販の検査キットで念のため調べてみることに
唾液を綿棒のようなものに染み込ませ
溶剤に差し込む
・・・
線が一本なら陰性
二本なら陽性である
さあ、どうでる・・・
数分後
一本の線が出た
おお
良かった
その後、薬を飲んでしばらく眠るとかなり良くなった
まだ頭はちょっと痛いが、日常生活に問題なさそう
つうことでつづく
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