Aさんの転職活動日記
Aさん・・・
俺の会社にいる障害者である
生まれつき神経に問題があるらしく、片足がマヒしている
この会社には障害者採用として雇われており・・・
守られた立場ということもあってか、かなりの自由人である
勤務時間中に、ヨドバシカメラの好きな店員さんに暑中見舞いのハガキを書いたりなど・・・
このブログでも度々登場している人なのだが
そんなAさんが今日も俺のデスクにやってきた
一日、多分4回くらいは俺のデスクに遊びに来ている
「今、話しかけても良いですか?」
ええ勿論ですよ、と俺はいつもそう返す
どんなに忙しくても、誰から話しかけられても
俺はそう答えることにしている
ムショの激しい刑務作業に比べれば、
販社でのチンパンどもの相手に比べれば
ここでの仕事の忙しさなんてたかが知れているからだ
「Mさん、今日はとっておきのネタを持ってきましたよ!」
ありがとうございます!と言った後、Aさんが満面の笑みを浮かべた
俺の経験上・・・
このとっておきのネタ、とは得てして大したことがない
「テレビで美味しそうなチョコレートのお店を紹介していました!」
とかせいぜい、そのレベルである
だが
「お!それは気になりますね・・・!」
一応、乗り気なフリをする
すると
秋山さんは、杖を突いた体を窮屈そうに屈ませ・・・
俺に耳打ちする体勢を取った
え
なんかいつもと違うなこれ
今日のはマジでとっておきのネタなのかも知れない・・・!!
俺も耳を傾ける
「(実はですね、転職の面接を受けることになりました!)」
とても嬉しそうにそう言われた
「(まじですか!?)」
小声で驚く俺
だってそう
いつもいつも
「僕がここで働けるのも、この会社の皆さんが良くしてくださるお蔭なんですよ~」
的なことを言っていたからだ
「僕はですね、もっとみんなと同じように働きたいんですよ」
いつになく真面目な顔でそう話すAさん
Aさんは障害のこともあり、時短勤務で9時から4時までである
が、本人としてはもっと働きたいらしい
フルタイムで働いてお金が欲しい、というよりは
ただただ純粋にみんなと同じになりたいらしい
「僕は国から障害者年金やら、補助金やらいろいろ貰ってるんでね?お金には全然困ってないんですよ~!政府の皆さんには頭が上がりませんよ!」
納税者の皆さんには到底聞かせられない話である
まあ尤も、俺もその納税者の一人であることに間違いはないのだが
話を戻すと
この会社では、障害があることを理由にフルタイムでは雇ってもらえないため、転職したいらしい
「もっと言えばですね・・・」
この会社しか知らないのが嫌らしい
その気持ちはわかる
俺も下らん自動車販売員なんぞに、終始するつもりなど毛頭なかったからな
とはいえ、Aさんの自由人ぶりから考えると転職すると今までのように好き勝手振るまえなくなるのでは・・・??
なんて喉元まで出かかったが
飲み込むことにした
その後
自分のデスクに戻ったAさんから、今度受ける会社の求人票やら
志望動機などが送られてきた
勿論、社内メールで送ってきている
相変わらず、怖いものなしである
「書類通過率は10%くらいだと言われていたんですが、一発目でいきなり通りました!」
そんなことまで書いてある
どうやら、大手人材派遣会社の特例子会社らしい
特例子会社、というのは障碍者の雇用促進を目的に設置された会社のことである
障害者専用の転職サービスがあるらしく、そこに登録して応募したそうな
書類が通ったくらいで浮かれるのは良くないのだが・・・
「すごい打率ですね!翔平SHOW TIME!」
野球が好きなAさんに合わせて褒めることにした
Aさんは狭き門を突破したと喜んでいるが
社会としては今、障害者が「足りない」らしい
というのも
50人以上の法人には障害者の雇用努力が義務として定められているのだが
年々数値は上がってきているものの、政府の決めた水準には届かず
今年、政府がその雇用目標の数値を更に上乗せしたこともあり
世間は今、空前の障害者採用ブームが起きているらしいのだ
人事関連の業界紙で最近読んだ
これはもしかすると、ホントにそのままスルっと転職先が決まってしまうかも知れないな
そんなことを考えながら、俺は社内メールにて次々とAさんから送られてくる転職の相談に乗るのだった
ちなみにだが
転職の面接はZOOMで実施されるため
在宅勤務の日にやるらしい
最強すぎるだろ・・・
多分、履歴書とかも勤務時間中に書いてそうだな・・・
つうことでつづく
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