管理人のいちばん長い日
今日は通っている居合の道場と関わり合いのある団体が主催する合宿に参加してきた
俺だけではない
同じ道場に通う人と一緒である
のだが
この人が曲者なのである
というのも、師範に頼まれ、俺の車で一緒に会場へと向かうことになったのだが
その連絡のラインにて
「道着を着たままでいきますか?」
という意味不明すぎる一文を送ってきたためである
普っ通に考えろ?
道着を着たまま?
お前は?
表を歩くのか??
ここは現代日本だぞ?
このクソしょうもない一言により、俺は一気にこいつ・・・通称道着おじさん(推定33歳くらい)のことが嫌いになり
非常に重い胸中でこの日を迎えることになった
朝七時半、待ち合わせ場所にて道着おじさんを拾う
ここから会場まで小一時間ほどのドライブである
正直、道着を着て表を歩こうとする完成の持ち主となんざ話したくもないが
互いの身の上話をする
開始早々、道着おじさんが口を開く
「東京に住んでいたんですか、どちらの大学ですか??」
こいつ・・・!
学歴厨の俺より先に!?
俺に大学名を聞いてきやがった・・・!!
なんというやつだ
(余談だが、道着おじさんは同志社大学出身らしい)
おじさんは語りは続く
「大学卒業後は通訳の仕事をしておりまして、インバウンドでウハウハだったんです。とにかく需要がすごくて、誰でも商売できたんですよ。それで、何社か経験した後、貯まったお金で起業をしましてね・・・」
だが、会社設立数か月後にはコロナが始まり
貯金のほとんどを費やした会社は瞬殺されることになったらしい
子供も二人いるらしいし
なかなかの波乱万丈人生である
変な奴だと思っていたが、俺は少し道着おじさんを見る目を変えた
ちなみに、勤めていた会社の中には、かなりいい加減なものもあったらしく、給与明細がない、とか健康保険の手続きがめんどうだから、保険に加入しない、とかいうのもあったらしい
インバウンドというのは、そんないい加減なやつでさえ儲けられる世界だったそうな
しかし、そうなると・・・
「あれ?でしたら今は何をしてるんです?」
俺がそう言うと
「HPの制作とかですね。でも、一番の収入源はYouTubeなんです。」
YouTubeが収入源・・・?
きっと月数千円とかそんなもんだろう
日本文化を海外に紹介する動画を作っているらしい
至極ありふれた内容である
一体誰が見るのだろうか
(そう思っていたが、後で調べてみたらチャンネル登録者数17万人のすごい人であった)
まあそれはさておき
会場に着いた
のだが
みんな黒い道着を着ている中
俺だけ白
かなり目立っていた
大学時代の道着が白だったから、そのまま今日まで着ているのだ
それに加え、袴の結び方も違う
みんなは十文字結びだったが
俺だけ結び切り
そのせいだろうか
稽古が始まり・・・
今回の合宿を主催している道場の師範が俺に声をかけた
「Mくん、袴を履くときはどっちの脚から履き始める?」
え
そんなの考えたこともない
が・・・
「えっと・・・右足からです」
俺がそう言うと
「それはいけないなあ!右から履くのは切腹するときの作法だぞ?左足から履かないとだめだ!」
衝撃の事実を告知される
(まじで!?)
その後も、師範のアシスタント的な役割として、技を食らったり、斬りかかられたりした
そうやって、師範による稽古が終わり休憩時間となる
非常に疲れたし
頭が痛い
多分、水分が不足しているせいだ
カラカラに乾いた喉を潤すべく、俺は水を飲もうとするが・・・
「君!Mくんっていうのかな!抜刀と納刀がヘタやから、ちょっと見てあげるわ!!」
気の強そうなおはに声を掛けられた
(まじで・・・?)
「刀はねえ!こう!腰はこう!!」
文字通り
おはに手取り足取り
逆セクハラを受けていた
最近知ったのだが、女性は男性に比べ「見た動きをそのまま真似る」というのが苦手らしい
脳のつくりによるものらしいが・・・
そのせいか、居合を教える女性というのは、いつだってこういうやり方をする
大学時代は、女の先輩にこんな風にして教えてもらうのちょっと好きだったな・・・
しかし今は違う
40代のおはに触られても全然嬉しくない
そうやって、おはからの猛攻が終わる頃には
休憩時間も終わり
俺はそのまま稽古を続行することになった
そうしてやっとのことで昼休みを迎え
文字通り渇望していた水を俺はやっと飲むことができた
そうして午後
段位ごとの稽古となり
俺は安心していた
さっきのおはは低段位のグループのインストラクターになっていたからだ
今度4段の俺は中段位のグループ
(助かった・・・)
そうして稽古再開
俺のグループはカクシャクとした感じのじいさんがインストラクターである
が
じいさんのレクチャーがかなり俺に偏っている
俺が気になるのだろうか・・・?
目線とかもやたら合う気がする
そう思っていると
「実はね、Mくんのことがつい気になってしまうのだよ」
今日会ったばかりなのだが
俺はそのじいさんから告白されていた
「・・・?」
首をかしげる俺
「C大学で居合をやっていたんだね?部活?それともサークル?」
俺の今日目立ちまくっているこの白い袴には、大学名が刻んである
それを見て言ったのだろう
ちなみにC大学居合道部は公認サークルである
「私は大学から居合をやっている人が好きでね・・・。どうにも、大人になってから始めた人って、どうも基礎がしっかりしてないのが、気に入らなくってね?」
言いたいことはよく分かる
学生時代とかに泥臭い稽古をしていないやつは、どうにも腰が入っていないような動きをする
しかし、この場にいるのは俺以外、ほぼ「大人になってから始めた勢」であり、そんなことを公言してしまって良いのだろうか・・・
少し焦ったが、じいさんはお構いなしのようだ
「だから、ついつい色々と教えたくなるんだよ。それに学生出身の人は覚えるのも早い!」
買いかぶりのような気もするが
午前中、散々悪目立ちしたこの白い道着のお蔭で
午後の稽古はじいさんから色んなことを教えてもらえた
そうやって稽古は無事終わり・・・
俺と道着おじさんは来た時と同じように帰っていた
帰りの車の中
道着おじさんがまた、身の上話をしている
「私ももう27なんで、もうちょっと家族のこととか考えてあげないとダメですねー」
聞いてもないのに家族の話をしていた道着おじさんだが
今
聞き捨てならないことを聞いた気がする
え
こいつ、今
なんて言った??
「え、27歳?ですか?」
33~35歳くらいじゃねえのかよお前!?
どぎまぎしながら確認する
「ええそうです、先月27になりました」
まじ!?
ここにきてまさかの年下!?
最後の最後に衝撃的なオチを提供していただき
俺の長い一日は終わった
嗚呼
疲れた・・・
腰とか特に
ファックしていないけど
つうことで
つづく!!
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