三段審査の思ひ出
(弓道は十段まであるらしい)
10月に俺は居合の段審査を受ける
次は四段
居合はマックス八段までだから、半分くらい居合を極めた計算になる
師範は受かるというが・・・
俺は内心かなりビビっている
嗚呼
三段を受けたときのことを思い出す
あれは大学四年の3月
卒業を間近に控えたタイミングでの段審査であった
このタイミングに備え
俺は一月くらいから本格始動をしていた
だが・・・
元々、あまり熱心に稽古をしていなかったし
そこに就活やらなんやらで、さらに拍車をかけて居合から遠ざかっていた俺の腕はかなり落ちていた
そもそも、三段は結構難しい段位である
毎年、不合格となってがっくりとうなだれる先輩たちを何人も見てきた
中には、落ちるのを後輩に見られるのがかっこう悪い、という理由で受けない人もいるくらいだ
しかし
俺は敵前逃亡だけはしたくなかった
それが俺の大学居合での最後の意地だ!!
とまあそんな意気込みで稽古すること幾星霜
段審査までおよそ2週間前となった
・・・
ここは、大学内の道場
「大沢(仮名)どう思う?再来週、三段なんだ」
俺の居合を見た師範は眉間にしわを寄せ
OBである大沢さんに話を振っていた
ちなみに、大沢さんは学生時代に全日本大会で入賞したこともある凄腕である
「いやぁ・・・キツいんじゃないですかねえ・・・」
覚悟はしていたが・・・
やはり、実際そう言われると堪える
「そうだよなあ・・・」
師範も同意見らしい
まあそうだよな
今までサボりにサボってたツケがあっさり清算できるほど、甘い世界じゃない
なんて思っていたが
「おい、何ボケっとしてる?稽古を続けるぞ?三段くらい取れなくてどうする??俺と大沢が付いてるから大丈夫だ、多分」
まじか・・・!!
「お前はC大の学生だろ?理解力はあるはずだ。だから、これから俺たちが言うことを全て一瞬で理解しろ?」
師範はうちの大学のOBでもある
学生の能力を信じたいという気持ちもあるのだろう
全てを一瞬で理解しろ、は冗談で言っているわけではない
師範はそうしなくてはいけないから、そう言っているだけだ・・・!!
その後、俺は師範と大沢さんを始めとしたOB軍団にシゴきにシゴかれ
いよいよ段審査の前日、最後の稽古となった
「これならまあ・・・ギリッギリってところかなあ・・・?」
大沢さんからも太鼓判(?)も手に入れた
だがしかし
俺は万全を期したい
そこで俺は、ある刀を借りることにした
その名も・・・名刀「萬傳(バンテン)」!
居合道部に保管されている刀の中で、最も振りやすいと言われている刀である
本来なら、審査は自分の差料で受けるのが普通なのだろうが・・・
大会とは違い、刀の規定がない
つまり何を使ってもOKなのである
だから俺はこの萬傳に頼ることにしたのだ
そうして迎えた当日・・・
審査員の前で死ぬほど緊張しながらも、無事演武を終えた俺は
三段に合格したのであった
・・・
あれからもう4年か
早えな
審査は10月だというのに、今から緊張するぜ
つうことで
つづく
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