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在りし日々

たくろーが転勤になる
異動先は週明けの発表になるらしいが
どうやら、前例などから行くとド田舎になるらしい
たくろーとは実は幼稚園が一緒で、俺の数少ない幼馴染でもある
そう言って絶望する幼馴染の話を聞きながら
俺の頭は回想へと向かっていた
・・・
2017年8月某日
静岡県某所にて
生産実習と呼ばれる、自動車製造工場(通称ムショ)での実習を終えた俺たちは・・・
座額の研修を受けるべく、大会議室へと集められていた
そんな俺たちを前に、人事部の部長がやってきてあいさつを行う
「みなさん、生産実習お疲れさまでした!いやあ、大変だったでしょう!でも安心してください!うちでの仕事に、工場以上にキツイところなんかありませんから!」
部長がそう言うと、みんながどっと笑い、会場が沸いた
「私もこの会社に来て長いのですが、これは本当です!私もあの頃が一番キツかった!だからもう、これからは楽な仕事しかありませんよ!良かったですね!!」
これから
販社に配属となってから、起きるであろう悲劇など当時、知る由もない俺たちは
その話を聞いて、再び笑うのであった
そして凡そ二週間にわたる座学が終わり
8月27日が来た
忘れもしない
配属発表の日である
会議室に集められ、ソワソワするみんなをしり目に、俺は投げやりになっていた
「いいさ、どうせ俺は択捉島の配属になるんだ。それで誰からも忘れられて、かの地でひっそりと死ぬのさ。だからみんな、不幸は全部俺が持っていくから、安心しといてくれ」
近くのムショ仲間たちにそう告げる
反応は様々である
「いやー、俺もどうなるかなあ、尖閣諸島だったりして!!」
俺に乗っかってくるのは上智大学出身のやつ
こいつとは一番仲が良い
「俺は人事面談の際に、結婚を考えている彼女がいるんで千葉県にしてください!って言ったら、分かった!Yくんは千葉県押しにしておくね!って人事の人が言ってくれたわ!!」
そう言っているのはY、拓殖大学出身で自分のことをバカだといつも公言している
FランはFランでも良いFランだ
しかし、こいつはこの数十分後、青森県配属と発表されることになる
「俺も彼女と結婚するから、絶対神奈川がいいって言ったら、人事の人分かった!って言ってたよ!!」
こいつは専修大のやつ
巨根が自慢で、よく風呂場で見せびらかしていた
こいつは、この後栃木県への配属が言い渡され、絶望することになる
ちなみにだが
配属希望は都道府県単位で出すことができない
関西ブロック、とか関東ブロックとか、そういう単位でしか配属希望表には書けず
○○県希望、というのはあくまでも配属前の人事面談で口約束程度に行われるものであった
それに初任地は出身都道府県&出身大学のあるところ以外、というのが決まっており
どう頑張っても知らない土地で飛ばされる仕組みであった
さて、俺たちが雑談している内に配属発表が始まり
都道府県ごとに順番に配属者が呼び出されていった
皮肉なことに、彼女とか結婚とかを口にしていたものはみんな希望地から悉く外され
俺や上智のように完全に諦め切っていたやつらに限って、ほぼ第一志望の配属先となっていた
人事部というのは本当に意地悪なところである
希望が叶い、嬉しく思いながらも、うちの会社の実態が透けて見えたような気がして、俺の気分は悪くなっていた
・・・
そこから先は、全国へと散り散りになるムショ仲間たちと夜通し別れを惜しみ
俺は伊丹へと降り立ったのである
きっと、これから先も誰かの転勤を聞くたびに俺はあの日のことを思い出すんだろうな
つうことで
つづく!
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