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ダブルZ(ゼータ)居合

憎悪と絶望は、俺の剣を冴え渡らせるらしい
今日は居合の大会に出場した
俺は今までの人生において、大会でただの一勝も上げることができなかった
それに俺が出るのは三段の部
三段、といえばそれなりに真面目に稽古を積んできたものたちである
(にわか勢は何故か大概二段くらいまでで消えてしまう)
故に、師範には悪いが今回もどうせ負けるだろう、いやさっさと負けてすぐに帰ろう
そう思っていた
のだが
二つのZがそんな俺に革新をもたらした
そう
憎悪と絶望の2つのZ、ダブルゼータである
世界を憎み、果てなき絶望によって彩られた俺の剣は・・・
俺の予想以上に研ぎ澄まされ、冴え渡っていたらしい
・・・
307という番号の名札を付け
一回戦に臨む
居合というものの力量は、そいつが刀に手を掛けた瞬間だけで分かってしまう
手を掛ける、というと至極単純で差別化のしようがないような動作に聞こえるが・・・
実際は、手を掛けるときの角度、指の掛かり具合、僅かな肩の動きなど様々な要素が含まれており
それを見れば大体の腕前が分かるのだ
そのため、試合の勝敗は開始数秒後にはほとんど決まっている
だから最初だけ気合入れて、あとはてきとうにリラックスしてやり過ごそう
そんな俺の作戦が功を奏したのか
俺の番が終わり、しばらくすると・・・
二回戦、準決勝のトーナメント表として貼り出されたそれには
俺の307という数字が載っていた
(まじで!?)
師範が小走りで俺の元へやってくる
何かコメントするつもりだろう
そうして一言
「力むなよ」
こういう場に出るとついつい張り切ったりして力んでしまうが
究極の脱力状態から放たれる一閃が最も速く、そして鋭い
こういう場だからこそ、いつも以上に脱力しなければならないのだ
師範の言葉の真意を瞬時に悟り
二回戦・・・!
相手は京都大学居合道部の人間である
京大といえば全国大会で何度も優勝している強豪校である
こりゃだめだな
勝てない
一本でも取れれば万々歳だ
そう考え、リラックスする俺
さあ・・・
本日二回目の憎悪と絶望の剣
審査員、並びにギャラリーの面々!
その目にしかと焼き付けるが良い!!
・・・
だが
結果は散々
一本も取れなかった
(まあ、そうですよね・・・)
ありがとうございました、と試合後の礼をしながら自分に言い聞かせた
後に分かるのだが、その人はかつての京大居合道部の主将だった人
過去の実績などから考えると、三段、という括りで見れば日本最強の内の一人である
憎悪と絶望の力だけでは太刀打ちできないのは当然
怒りのスーパーモードも明鏡止水のハイパーモードには勝てないもんな
ギアナ高地で修行して出直してくるしかないようだ
とはいえ
一応、予選は突破したので無駄に立派な賞状を貰い
俺の大会は終了した
試合を見学に来ていた、大学時代の先輩とも偶然再会できたし・・・
久しぶりに充実した日曜日であった
つうことで
つづく
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