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刑務作業レポその4
今日、俺の仕事は完全に崩壊した
この「仕事が崩壊する」というのは一体どういう状況を指すのか
これから説明しよう
まず、一言で言ってしまえば、昨日、俺がやっていた作業だけでキャパシティの限界だったのに、さらに作業が追加されたのだ
今まではバンパーホルダーの取り付け、ウォッシャー液系の配線、そして車種によってはサイレンサーをセットするというものであった
が、今日からは車の屋根の上にアンテナを取り付ける作業と、レールの取り付けまで加わったのだ
しかもこのアンテナの工程は、取り付け方が雑だとそこが雨漏りの原因となり、最悪リコールの原因にもなりかねないというものである
これら全工程を68秒以内にやらなくてはならない
約68秒とか、そんなんではない
68秒
丁度である
自動車工場というものは、一秒ラインが停止すると約5000円の損失が出ると言われている
それ故、時間に関しては秒単位で厳格に管理されている
だが、そんなことを言われても、できねえもんはできねえ
昨日の段階で俺の能力の限界に達する作業をしていたのに、新しい作業がさらに追加されてはもう
わけわかめである
死ぬ気で作業しても、間に合わない
ベルトコンベアーが次の工程のゾーンに差し掛かってくると、脳内アラートが鳴り響く
YES WE CAN!なんてもう聞こえない
無理なもんは無理だ
そうなると、仕方がないので上からぶら下がっている黄色い紐を引く
この紐はやばいときに引くもので、ベルコンベアーをゆっくりにしたり、停止させたりすることができる
(ちなみにこの紐のことを何故かアンドンという)
このアンドンを引くと、非常事態を意味するアラートが鳴り響き、生産ラインがアラート音で埋め尽くされる
俺の脳内も既にアラートまみれなので、そうなると俺の認識する世界、即ち、外の世界と内なる世界、心の中は全てがアラートで塗りつぶされることになる
こうなってくるともう
わけわかめである
最早、これはある種の無の境地、言うなれば禅である
そうしてアラートを鳴らし、少し待っていると、ハンチョウが飛んでくる
ハンチョウに「遅れです」というと、ハンチョウが遅れが修正できるまで作業を手伝ってくれ、また正常な生産ラインに戻る・・・というシステムである
が、10分後くらいにはまた俺のキャパシティを超えてしまうので、またアンドンを引いてハンチョウを呼ぶ・・・といった具合である
今日は一体何度、このアンドンを引いただろうか
もう
わけわかめである
まあそんな感じでつづく
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