人間の生産性が最も高く発揮されるのは
高い給与を貰っているときでも
ましてや低い給与を貰っているときでもない
一番高いのは・・・
ボランティアで働いているときである
大昔
滋賀大学のオープンキャンパスで経済学部の教授が話していた
換言すれば
タダより(生産性が)高いものはない
ということだ!!
つうことで
俺は北野天満宮の祭り「瑞饋(ずいき)祭」にボランティアとして参加することになった
というのも・・・
通っている居合の道場の師範がこの祭りの役員をやっているらしく・・・
3年ぶりに祭りを開催しようと思ったらメンバーが足りない!
となったらしく、道場のメンバーにも動員の声がかかったのだ
しかし15人くらいいる道場のグループラインで反応したのは一人だけ
これでは流石にまずいと思い、俺も手を挙げることにした
(後に知ることになるが、ウワサでは結局メンバーの充足率は半分ほどらしく、全然足りていなかったらしい)
のだが
後ほど俺はこの行動を激しく後悔することになる・・・
そんなこんなで朝9時半
北野天満宮の神楽殿に集合する
事前に聞いていた話では、なんかの装束に着替えて行列に参加する感じらしい
服を着て歩くだけなら、まあ簡単か
俺と同じようにボランティアで参加する連中も集まっている
連中、といっても大体はオッサンである
9割方はオッサンか
となると
(嫌な予感がするな・・・)
こういうオッサンばかりの状況では
若い、というだけでキツい役割とかを自動的に振り分けられることが多い
俺ももう29で若くはないのだが・・・
オッサン連中はそんなのお構いなしである
そんな俺の予想を裏付けるかのように
集合場所で装束を渡された際のメモ書きのようなものには
「汗衫傘持」
と書かれてある
意味は全く不明だが・・・
(汗に傘を・・・持つ??)
不穏な字面であることこの上無い
なんだか思っていたのと違うぞ??
がっつり肉体労働かこれ!?
ちなみにこれで(かざみかさもち)と読むらしい
初見では不可能だ
・・・
さて
白丁という名の装束に着替え
本殿で祈り的なものを捧げたあと
いよいよ行列編隊に入る
名前を呼ばれたら「おう!!」と答え、指定された場所でスタンバる
「MのN!!」
すがわらのみちざね、みたいに苗字と名前の間に「の」が入るスタイルらしい
一瞬、自分の名前なのに分からなくなりそうだったが
「おう!」
そう答えて指定された場所・・・つまり傘持部隊の集まる場所へと向かった
が
(弱そうな大学生かアホそうな大学生しかいない・・・)
大学生連中はどうやら、このボランティアで3回分の出席点が貰えることになっているらしかった
それゆえ、傘持隊は平均年齢が若い
俺も大学生に見えたのだろう
「ここで俺、合ってるよね??」
アホそうな大学生に思いっきりナメた口を聞かれた
しかし先ほどの嫌な予感が正に的中しそうだ
汗に傘を持つという不穏な字面
やたらと若いメンバーを中心に構成された傘持隊・・・!
しばらくすると、説明係のオッサンが現れた
「それではこの傘を持って、横に歩くお稚児さんに差してあげてください。くれぐれも顔に日が当たらないように!!」
そう言って示されたのは、2メートルはあろうかという巨大な和傘!
ずっしりとした重みがある
5キロはありそうだ
これを普通に持つだけではなく、
横を歩くクソガキに向けて展開しながら歩けだと!?
(まじで!?)
行列が行進するのはおよそ3時間
ずっと歩くというのか・・・!?
(なん・・・だと・・・??)
傘持メンバーたちに戦慄が走る
ずっとヘラヘラしていたアホ面も「嘘だろ・・・」と息を飲んでいる
つうことで
戦慄する我々をよそに
祭りはスタートしてしまった
・・・
日本人形のような恰好をした推定5~6歳の女の子(お稚児さん)と
「よろしくお願いします~」
のんびりした感じのBBAが俺の横に付いた
(子供の年齢の割に老けてないか・・・?)
この国の晩婚化の実態を垣間見た(かも知れない)気がする
早速、巨大和傘を展開しお稚児さんに影を作る
(イメージ図)
のだが
お稚児さん、いやクソガキは当然ながらジッとしていられない
早速、傘を持つ俺のことなどお構いなしにウロチョロしていた
そのため、当然傘の影に入らなくなる
すると
「ちゃんと傘を構えないと、お稚児さんのお顔に日が当たってるやないか!」
祭りの運営メンバーらしきジジイに即座に怒られてしまった
(いやいやいや!?)
こいつが勝手にチョロチョロ動くからであって
俺のせいではない・・・!!
断じて・・・!!
というか、傘持ってそれらしきポージングをしていれば良いのではなく
ちゃんと影を作って、その中に入れ続けなければいけないのかよ
(祭りなんて、様式と形式の塊でしかないだろうに・・・!)
傘を持つ、という体裁が整っていればそれで良かろうに
ともあれ、俺はクソガキの不用意な動きに合わせ・・・
5キロの傘の角度や位置を常に的確に変えながら、歩かなければならなくなった
普通に重労働である
会社がある日より
道場の稽古より
普通にキツい
流石にピーク時のムショの刑務作業ほどではないが・・・
ムショ2日目くらいのキツさはある・・・!!
自動車工場での生産実習、通称刑務作業は想像を絶する激務であったが
俺にムショ時代を思い出させるとは、大したもんである
いずれにせよ
こんなのボランティアの範疇を超えているではないか!!
(クソガキよ・・・微動だにするな・・・影の中から用もないのに出るな・・・!!)
殺気立つ俺
子供ながらそれを感じ取ったのか、俺から離れるクソガキ!
するとまた影の中に入らなくなり、俺が指摘を受けるという悪循環・・・!!!
しかし何より腹立たしいのは、この母親のババアが注意しないことだ
もっと「大人しくしなさい!」とかクソガキに注意していれば、俺の留飲も下がっただろうに
何も言わない
俺がクソガキに合わせるのが当然、とでも言うかのようだ
(お前をこの傘でぶん殴ってやろうか・・・??)
お前みたいな親が!!
のさばっているから、子供がどんどんフリーダムな感じになり
そいつらの集まる学校が手に負えない感じになり!
先生が病んだり、余計な問題が起こったりするんだよ!!
またも日本の社会問題を垣間見た(かも知れない)
ただ
唯一、俺の心の支えがあった
そう・・・
それは沿道に立つボランティアらしき女子大生たちだ
彼女らが忙しなく走ったりすると・・・
(揺れる!!)
乳が揺れるのだ
動きやすい服装で来るように指定されているためか、全員シャツ1枚のような軽装
故に揺れも良く分かる
それを眺めることだけが!
俺の唯一の心の支え!
(クーパー靱帯が切れたりしないかな・・・)
クーパー靱帯とはおっぱいを支える体の組織で、一度切れるともう元には戻らない
そして走ったりして激しく揺れると切れてしまうことがあるのだ!!
若干不安になるものの
(やはり良い!)
俺が今やっていることは、あまりにボランティアの割に合わない
これだけのことをしているんだから、終わったらお好きな女子大生お持ち帰りくらいのサービスは欲しいものだ
そうして3時間
俺はクソガキと母親に苛立ち
腕が棒のようになり
乳が揺れる様を眺めながらも
なんとか、行列のコースを歩き切った
ま・・・
まじで疲れた・・・
腕が上がらない
スマホを見たいのに、顔の前に構えることができない
なんだこれ
やばすきだろ
嗚呼、おっぱいがなければマジで死んでいたぜ・・・
かくして、俺のボランティアは無事(?)終わった
2度とやらないからなもう!!!
つうことで
つづく