「うわ、やってもうた・・・」
店長がジュースをデスクに思いっきりこぼした
俺は2メートルくらい先から、その光景を見ていた
デスクの総面積の25パーセントくらいが水浸しになっている
割とがっつりこぼしている状態だ
嗚呼
どうしよう
と、いうのも
奇しくも、そのとき俺の手には雑巾があったからだ
そう
俺が雑巾を手に持っている、目の前で店長がデスクにジュースをこぼしたのだ
本来ならば・・・
俺はこの雑巾を店長にすぐさま渡すべきなのだろう
だが・・・
この雑巾はワケアリである
ワケアリ・・・
というのも、この雑巾でついさっきトイレ掃除をしたばかりなのだ
(俺の仕事の一つに店舗のトイレ掃除も含まれている)
それでちょうど、俺は掃除を終え、トイレから出て来ていたので、使用済み雑巾を持っていた、というわけである
であるが故に
俺はとまどった
この雑巾を店長に渡すべきかどうか・・・
店長は恐らく、俺が手に持っているこの雑巾がどういう雑巾なのか、正しく理解していないであろう
だから、別に渡しても問題はない
しかし
それは非人道的な行いではなかろうか
ここで店長に雑巾を渡し、偽善を成すか
それとも、ダッシュで清潔な雑巾を取ってきて、店長に渡すべきか・・・
俺は考えた
いや、考えたかった、という方が正しいだろう
何故なら・・・
俺が結論を出すよりも早く
事態が動いたからだ
「お!お前丁度ええところに雑巾もってるやん!!」
雑巾を持ち
どうすべきかを考え、立ち止まっている俺の手から
店長は有無を言わさず、それを奪い取ったのだ
「あ・・・ えっと・・・」
俺の声は届かない
店長は大慌てで、そのつい先ほど、トイレ掃除に使った雑巾を使い
自分のデスクを拭いた
それこそ、とても丁寧に
その光景を俺はぼんやりと見ていた
嗚呼
・・・
まあいいか
つうことでつづく